Another I -共有-





その日、空は晴れ晴れとしていた。


「んにゃわーっ!遅刻するーっ!!」

そして、ベタなこと。
その青空の下、少女が一人、学校へ向かって走っていた。



「おはよ、翠。聞いた?今日発売のゲーム!」

「おはよー。…ふえ?今日発売のゲーム?」
走り疲れてくたくたの体を机に預けると、
少女…翠は寄ってきた少女を見上げ、その言葉に首を傾げた。
「あれ?知らない?有名だよ。輪廻」
「りんね…?」
「そ。すごく規模が大きいんだって」
熱く語るようにぎゅっと拳を握る少女。
けれども、翠の口からはへぇとしか言葉が出ず。
大体、走った後に話をするなんて、無茶だ。


―――輪廻〜集いし者〜。



「…そういえば、街中にポスターが貼ってあったっけ…」

ぼんやりとした意識の中、
先ほどの言葉を浮かべると、どこかに引っかかるものがあって。
それが街中に貼ってあるポスターだと言うことが分かると、
翠はその意識を手放し、そのまま眠りへと入っていった。



―――どんなゲームなんだろうなぁ。

…なんでも、意識がトリップしちゃうんだって!


―――トリップ?

…なんだろう。電脳世界に意識飛ばしちゃうのかな?


―――可能なの?

…可能にしたからこそ、有名なんだよ。


―――今まで、不可能だと謳われていたのに。

…まぁ、それは、やってみるに限るんじゃない?



『輪廻〜集いし者〜』を、さ。









「もしかして、今の寝言?」

「…そう、かも」
授業中も、ずっと飛んでたなー。彼女はそう思い首を振ると、
ぱんぱんと頬を叩き、眠気を吹き飛ばすような動作をした。
少しばかり、頬に朱が落ちる。
「で、やるの?」
「あたし?んー。うん、興味はある。…そっちこそ」
「うぅん…。まぁ、確かに、少しやってみたいかもねー」

その、新しい世界とやらを。

「世界観とかも、ゲームだから。結構すごいらしいよ?」
心を弾ませているのが、目に見えて分かった。
そんな友達の少女を見て、くすりと翠が笑う。

「…まるで、宣伝係だね」






輪廻の輪は、ネットワーク。

集いし者は、プレイヤー。






「さて、どのくらいの反響を見せる?」

パソコンの向こう。
一人の青年が、ふっと笑った。





end